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絵本「おおきな木」考察|言いたかったことは無償の母性愛?

おおきな木(英語の原題:The Giving Tree)は1964年にアメリカで刊行された名作絵本で、あるりんごの木と少年の交流を描いた物語です。

以下に内容や考察をまとめました。

作者:シェル・シルヴァスタイン

「おおきな木」あらすじ

木(りんごの木)は、ある少年のことが大好きで、木登りで遊ばせたり、リンゴをあげたりして毎日一緒にいました。

少年が成長すると、ガールフレンドに熱をあげるようになり、あまり姿を現さなくなって、木はひとりぼっちの時間が増えます。

大人になった少年は、ますます姿を現さなくなりますが、まれに姿を現す時は「お金が欲しい」「家が建てたい」とお願いがある時だけです。

それに対して木は、少年の幸せを願って、木になったりんごを売るようにあげたり、自分の枝を切ってそれで家を建てるように言いました。

長い期間が過ぎ、中年になった少年が姿を現しました。かなしみを抱えた少年は、遠くに行くための船が欲しいと言いました。木は、船を作るために自分の幹を提供し、とうとう切り株だけの姿になってしまいました。

さらに時がたち、老人になった少年が姿を現しました。木は「もうあげられるものはない」と言いました。少年は疲れて休みたいというので、木の切り株に腰かけさせてやりました。

感想や考察 この本の言いたかったことは?

この本をはじめて読んだのは、10代の終わりころ友人に「感動する本だよ」と勧められた時です。

友人は、木の無償の愛に感動しているみたいでしたが、私は今いちそうは感じられず、何とも言えない気持ちを抱きました。

時が経過し、村上春樹さんの新訳版が刊行されているということなので、いま改めて読んで、本がはなつメッセージが何なのか考察してみました。

なお、作者は明確なメッセージを発信しているわけではないので、読み方によって様々な解釈の仕方ができると思います。

①犠牲をいとわない無償の愛のようなもの

私に勧めてくれた友人のうけとり方はこれにあてはまるかなと思います。木は、自分の子供を、いつでもどんな時も大きな愛でつつんで許して与えてくれる、母性愛の象徴という感じでしょうか。

②環境問題を描いてる

自然というもののは人間が欲しいと言えばいつでも与えてくれるけど、人間は果たしてちゃんと感謝したり、自然にお返し出来ていないのではないか?という人間の愚かさを書いている。

与えてくれるのを当然だと思っている人間へのいましめ的な話。

③もらうだけのダメ息子(とその母親)を描いている

木を母親に見立てて、金をせびる時だけ姿を現すダメ息子と、とっくに大人になっている息子をいつまでも子供と思って甘やかす母親を皮肉を込めて描いている。

 

絵本=子供のもの、と考えると、一見、①お母さんの無償の愛、のようにも思えますが、私は正直、作者が描いてるのは、③または②なのでは、と思いました。

その証拠と思うのは、少年の呼称が老人になっても「少年」(原作ではthe boy)であることや、もし①のように”無償の愛”を描いてるのなら、木が憐れに見えないような描き方をするはずだと思ったので。

(無償の愛がテーマだ!と思える人は、私ような捉え方はひねくれて見えるかもですね笑。一方私も、そのような感想を持てる人は自分とは全く違う世界線を生きてきた人だなと思えるのです‥)

 

おおきな木 作者について

作者のシェル・シルヴァスタイン(1930-1999)、アメリカの作家で、写真を見たところイメージと違って驚きました。(やさしいそうな小さいおじいちゃんみたいな人を想像していましたが、ガタイの良い黒人の方のようです)

作者がどういうメッセージをこの絵本に込めたのかな?というのを聞いてみたかったですね

ちなみにこの作者の他の作品としては、「ぼくを探しに」(パックマンみたいなやつ)も有名です。この本も、絵はシンプルでアートっぽいのですが、哲学的な雰囲気ですね。

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