「レンタルなんもしない人のなんもしなかった話」の感想

2025年1月4日

書籍「レンタルなんもしない人のなんもしなかった話」の感想や思ったことをまとめました。

感想

レンタルなんもしない人さん(本名:森本さん、以下レンタルさんと記載)は、東京に暮らす男性で、2018年から「何もしない自分」を貸し出すサービスを行っていて、この本にはその活動内容がまとめられています。

この本は続編も出版されている上、ドラマ化もされていて、2025年現在も活動を継続されています。

まだ活動初期の頃、ネットメディアで紹介されているのを見たことがあったので、どんなことを行っているのかは何となく知っていましたが、最近になって本を出版されていることを知り読んでみました。

活動内容

活動は主にX(twitter)で周知していて、貸し出しの利用内容は、一人で行きにくい場所(観劇や映画、食事)に同行、メッセージ上で完結する声掛け(たとえば、荷物を忘れそうなので明日時間になったら促すメッセージが欲しい)、引っ越しの見送りをして欲しい、りんごを貰ってほしい、離婚届を出しに行くのに同行して欲しい、夜の都会を写真に撮りたいが一人は不安なので同行して欲しい、一人だと勉強や作業に集中できないのでそばにいて欲しい、ただお金をあげたいから貰ってくれ、など様々です。

人をレンタルするサービスは、単に何でも屋さんや、レンタル恋人、レンタルおじさんなど世の中に色々ありますが、レンタルさんの場合は、基本的にただ傍に佇んで簡単な受け答えをするのみで、何かを手伝ってくれるものではないです。(引っ越しで冷蔵庫運んでほしい、とかは断る)

面白さ

何もしない受け身な態度(に見える)で、依頼に応じて日々色々な人と会うレンタルさんですが、その中で思わぬ面白さに遭遇します(自分では行かない場所に言ったり、普通に暮らしていたら出会わないような人の話を聞けたり(かつて犯罪を起こした人とか))。

レンタルさんはルーティンワークが苦手だそうですが、この活動では毎日自分が考えもしなかったことを知れたり遭遇できて、変化があって楽しそうな様子です。

アンチ

レンタルさんはSNS上でアンチがいるようで、それについても考えてみました。

人それぞれ好みはあるので、何かを嫌に思ったりするのは自由ですが、直接の知り合いでもなく実質的な害がないのにアンチになるほど憎悪するというのは、相手に対して非常に関心が高いことの裏返しだなと思います。

ラクしてるように見えて許せないのかな。主夫や資産家の息子でお金に困ってなくて好きにやってるだけかもしれなくて、人のことを邪魔してるわけでも、犯罪してるわけでもないのに。

レンタルさんのレンタル料金は現在1件1万円の設定となっているようですが、当初は交通費と現地でかかる食事代のみで活動していて、「妻子がいるというのに生計はどうなってるんだろう?」という疑問は私も持っていました。

なので、私が初めてこの方を知った時、ラクして働かない人のような印象を受けなかったかと言えばウソになりますが、本を読んで行くうち、何もしていないわけではなく、依頼者が何か救われていたり、何もしなくても傍にいてくれることを感謝し、サービスについて満足していてることが伝わって来ます。

世の中に浸透している「働いていないと価値はない」という考えや、働くということや、人の存在意義とは何なのかについて、考え込んでしました。

友達で済むのでは?という声

レンタルさんを紹介した海外の動画で、友人のレンタルというふうに解釈しているものがありましたが、それは違うなと思いました。友人役のレンタルではない。

日本の、レンタルさんを取材した動画で、観光地(飲食店かな?)を巡りたいという女性が登場しましたが、友人だと全部自分の行きたいところに付き合わせるのには気おくれするので、レンタルさんだとありがたい、ってことを言っていて、それは確かに分かるものがあります。

また、離婚届の提出の付き添いという事例がありましたが、これが友人だったら、励まそうとしたり元配偶者を悪く言ってくれたりするかもしれなくて、レンタルさんならこれまでの事情や配偶者のことも知らないので、そういうアクションをせず、ただ話を聞いてくれたり同行してくれるだけだったり、初めての人と会って気分転換になってうまく気分を切り替えられるかもしれないという、友人とはまた違ったありがたさがあると思います。

色々な使い方が出来る

あと、レンタルさんの利用方法には定型がなく、使い方は多種多様で、借りる側の受け取り方次第で色々な利用方法が出来るというのもすごいなと思いました。

(人を借りたいけど、友達役や、恋人役が欲しいわけではない、またカウンセラーのようにがっつりアドバイスして欲しいわけでもない、そういったニッチなニーズにこたえられる)

レンタルさんの才能

レンタルさんは多分、相手に入り込み過ぎない一方、相手の話を”うん、うん” と受け止めているのが上手なのだと思います。それが出来るのはすごいと思います。

相手に入り込んで全部受けてしまいストレスになるということはせず、だからと言って適当に話を受け流してるわけではなくちゃんと聞いている。

そして新たな出来事、どんなことも楽しいと思える才能があるように思う。

あと、上手く行っているのはレンタルさん自身の雰囲気もあると思う。(決して何も苦労せずやってるってことではないですが)スラッとしていて信頼できる印象を持ち、暴力性や圧迫感も感じさせず、本人も、ただ佇んでいることに気負いや罪悪感を持っているように感じさせない。(ナチュラルというか)

 

また、このようなことを思いついたレンタルさんは独創的で、本当にすごいと思います。(ひらめきでビジネスを生み出す天才みたいな才能があるように思う)

きっかけは他の似たようなことをしている人のマネだそうですが、「何もしない」という価値を提供するというのは、私だったらどう頭をひねっても思いつかないことで、唯一無二と思います。(だって普通自分が何かを提供するとしたら、何かをやることを提供しようとする筈なので)

本を読む前は、軽い気持ちで読もうとしていて、読んでみて実際笑える部分も多く楽しい内容なのですが、見たこともない聞いたことない活動が良い意味で衝撃的すぎて、変かもしれませんが深い感銘を受けました。

(何というか、この活動を見て、見たことのない生物、宇宙人をみたような気分になった、ライトエッセイだと思ったらビジネス書だったかのようなもので、沢山の示唆に富んだ内容になっている)

新たな価値

レンタルさんの活動は、いつものルーチンとは違うことをすることで、何かを発見して新たな価値が生まれる、とういものに思えて、日頃人が価値を見出さないところにある、何か面白いものを発見する活動のように思えます。

レンタルさんは自身は、難関大学の院を卒業後にサラリーマンになるものの、あまり仕事を面白いと思えず上司から”何もしない奴”という扱いを受けていたそうです。

そういうことからすると、「人間って、何かをするから価値があるのか?何もしないことに本当に価値がないのか?」という問いが生まれてくるのかなと思いました。

また、この活動をすることで、何もできないと思っている人に対して「何も出来なくても、ただ存在することで価値がある」というメッセージになっている気がします。(本人はそういうのを意図しているとういことではなく、私がそう感じただけ)

私が利用するとしたら

ちなみに私がサービスを利用するとしたら、幼少期に住んでいた町をブラブラするのに付き添ってもらいたいなと思いました。思いのまま歩き回るとしたら2時間位必要ですが、知り合いに付き添ってもらうとしたら退屈させてしまって悪いなという気がするのと、一人でブラブラしすぎると不審者チックに見えるかもしれないので、人がいてくれた方が良いという感じ。

レンタルなんもしない人のなんもしなかった話 を見るには

この本は2020年にドラマ化版されています。

見たいので動画配信を探しましたが取り扱いがありませんでした。視聴したい場合は、DVDを購入するか、TSUTAYAの宅配レンタルするかになります。

TSUTAYA DISCAS 公式サイト

 

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みずのと

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