小説 「ペスト」の主要な登場人物をまとめました。「ペスト」にはそれぞれ立ち位置の異なる登場人物が登場するので、自分はこの人に近いかもという視点で小説を読み進めることができます。
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リウー
ベルナール・リウー。物語の主人公で、アルジェリアの第二の都市オランに暮らす医師。年齢は35才位。療養中の妻と離れて暮らし、ペスト流行初期から行政の対応の遅さに危機感を持ち提言を行い、職務を全うするため日々朝から夜中まで働く。物語内に詳しい説明はないが貧乏な時期を経ている
知人のタルーが、"パヌルー神父の説教をどう思うか"や神について聞いた際には「集団的懲罰などという観念は好きになれない」「パヌルーは書斎の人間で人の死ぬ所を十分に見たことがない。一方田舎の医師でも教区で臨終の人に接したことがあれば私と同じに考える(まず手当をする)」と述べた。
また、ランベールが(出兵の経験から"自分は愛する人のために生きたい"と考え、ペストと戦うリウーやタルーたちの取り組みをヒロイズムと捉え)「ヒロイズムや観念のために死ぬことが信用できない」と言ったのに対し、リウーは「今度のことはヒロイズムなどという問題じゃない。ペストと戦う唯一の方法は誠実さということ」「僕の場合、自分の職務を果たすこと」と述べる。
タルー
ジャン・タルー。がっしりとした彫の深い顔で濃い眉毛の若い男。ペスト流行の数週間前からオランの街の中央にある大きなホテルに住む旅行者。いろんな収入で楽に暮らしているように見えたが、謎が多く誰も彼の詳細を知らない。リウーの住むアパートの他の階に出入りしていてリウーと知り合いになり、ペスト治療の保健隊の組織を提案・実現する。
この町に来てから目にした出来事を手帳に記録していて、物語は、タルーの手帳も一部参照しているという形を取っている。
徐々にリウーと親しくなり、物語の後半では自身のことをリウーに語る。(検事の父が人を極刑にする姿を見て以来嫌いになり、人を裁き極刑に追いやる社会に生きるている=そのことを肯定している、と捉え苦しみを感じている、という内容)
グラン
ジョセフ・グラン。長く臨時職員として市役所に勤める、やせた風貌で口下手な50才前後の男。リウーの昔の患者だが、貧乏だったのでリウーは無料でみていた。
もともと市庁で統計課や戸籍の仕事もしていて、ペスト流行拡大に伴い保健隊の仕切り役として統計などの業務を引き受け献身的に働いた。リウーは彼を"目立たぬヒーロー"と感じている。
アパートの3階に住み、小説の執筆が趣味というつつましい生活を送る。身寄りはフランス本国にいる妹家族のみ。元妻が自分の元を去ったことを後悔していてる。
コタール
グランの隣人で人を警戒した感じの丸太りの小さな男。自傷騒動を起こしグランに助けられ、その場に呼ばれたリウーとも知り合いになる。
ペストの流行により周囲と対照的に元気で社交的になった。(罪を犯していていつ捕まるかという状態だったので(自傷もそのせい)、感染症の流行でそれどころでなる事、皆も自分と同じように困っている状況に心が軽くなった)
もともと密売で生計を立てていて、ペストの流行で物価が上がりさらに利益を得る。タルーが彼に興味を持ち、よく会話をしていた。
ランベール
レイモン・ランベール。フランスから来て一時滞在していた新聞記者の若い男。リウーに取材したことがある縁で知り合いとなる。タルーと同じホテルに滞在。
国に恋人を残している為、「自分はこの町には無関係な人間だ」と出国を望み(出兵の経験から、自分の愛するものの為に生きて死にたいと考えている)、手助けできないというリウーに対し、「愛する人が離れ離れになることがどんなことなのかあなたには理解できない」「あなたは抽象の世界にいるんです」と言い苛立ちを見せた。
しかし出国はなかなか実現せず、リウーが自分と同じように妻と遠く離れている中職務に従事していることをはじめて知り、国に帰るまで保健隊で働くようになり、帰国がかなう段になってもオランに残ることを選択した。
カステル
リウーよりかなり年配のリウーの医師仲間。海外でペストの症例を見た経験を持ち、リウー同様流行初期の頃から感染症の拡大に危機感を持ち、血清の製造に全力を尽くした。
パヌルー神父
市民の尊敬を得ていて博学な、キリスト教イエズス会(男子修道会)の司祭。中背のずんぐりした容姿。ペストの集団祈祷を行い、後には保健隊にも加わり最前線で活動、自身が罹患した際には医師を呼ぶことを拒んだ。
オトン氏
予審判事。いつも黒い服で正装し育ちの良いふくろうのような風貌。タルーが滞在するホテルに、よく妻と娘、息子(フィリップ)と共に食事に来ていた。息子は後にペストに罹患する。
リウーの母親
医師リウーの母。嫁が療養で不在の間、家のめんどうを見に来ている。明るい栗色の目をして落ち着いた雰囲気の婦人。
リシャール
オラン医師会の会長。
喘息持ちのじいさん
リウーの患者で年金暮らしの老人。落ちくぼんでいかつい顔をした年寄りのイスパニア(スペイン)人。50才までは小間物屋を営んでいて、その後は喘息で寝込むようになった。
若い頃から普通の若者が好むような遊びに興味を持たず、オランの町を出たこともないという浮世離れした生活を送っていて、リウーが往診するといつも、エジプトえんどうのより分けをしているというはじめから終わりまで変わらない日常を過ごす。
タルーは彼のことを気に入り、観察した様子を手帳に書き留めている。
語り手
物語の終盤で、語り手の正体は医師リウー本人であることが明かされる。