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夏目漱石「こころ」あらすじと考察【心理解釈やテストのコツも】

2020年5月10日

夏目漱石「こころ」のあらすじをざっくりと章ごとにまとめました。(結末までネタバレで要約)また、登場人物への考察テスト解答の際のコツ、感想も記載しました。

物語は ①先生と私 ②両親と私 ③先生の遺書 三部構成で、教科書に掲載されるのは③の抜粋です。

 

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1.「こころ」とは(辞書解説より)

漱石の晩年の作品である「こころ」について、辞書に内容がわかりやすく200字位でまとめられていたので、転載しました。

夏目漱石の長編小説。1914年4月20日~8月11日、『朝日新聞』連載。「先生と私」「両親と私」「先生の遺書」の3部から成る。両親の遺産を叔父に詐取され、人間不信に陥った「先生」は、親友のKを裏切って恋人を得たが、Kの自殺による罪の意識のため、自己苛責の退隠の生涯を過し、明治天皇の死と乃木希典の殉死に触発されてついに命を絶つ。前半は「私」という学生の目で間接的に表現、後半は「先生」の遺書という直接的告白体の対照的手法で、近代エゴイズムが必然に自他を傷つけるというテーマを追求、明治の知識人の孤独な内面をあばいた傑作である。

(ブリタニカ国際大百科事典 電子辞書対応小項目版 より引用)

100年以上も前の作品なんですね。明治から大正に時代が移り変わる時期という時代背景も影響しているようです。

 

2. こころ 詳しいあらすじと結末

以下は章ごとのあらすじです。

夏目漱石 こころ あらすじ 上「先生と私」

当時学生だった”私”は、夏休みに鎌倉の海水浴場で知り合った"先生"に魅力を感じ("先生"とは私が年長者を呼ぶときに使う呼び方で、先生が教師だというわけではない)、東京に帰ってからも先生の宅をたびたび訪ねるようになった。

先生は近づきがたい雰囲気を放っていたが、"私”は先生の学問の知識や思想に惹かれ、月2,3回も家を訪ねるようになり傾倒していった。

その先生はというと、大学卒で博識なのに仕事に就いておらず、何か苦しみを抱えているようだった。しかし仲の良い奥さんでさえもその理由が分かっていなかった。(奥さんによると、学生時代に先生の親友が亡くなり、それ以来人が変わったということだった)

夏目漱石 こころ あらすじ 中「両親と私」

”私”は大学卒業後、父が病気にかかっていた為しばらく実家に戻っていた。その時、先生から過去を記した手紙を受け取った。(それは遺書でもあった)

夏目漱石 こころ あらすじ 下「先生と遺書」

以下は”先生”が”私”に宛てて綴った、先生のこれまでの人生を記した手紙の内容です

ーーーーーーーーーーー

"先生"は、高校生の時相次いで両親を失くし、叔父に遺産を誤魔化される目に遭い、以来故郷と縁を切り、人間不信になっていた。

しかし大学生になってからは、間借り先の未亡人の奥さんとお嬢さんとの交流のおかげで元気になり、美しいお嬢さんに恋心も抱くようになった。

そんな中、"先生"は、神経症で弱っていた幼馴染の友人Kを、間借り先に一緒に住まわせる事にした。

次第にKが元気になって嬉しかったが、その内Kもお嬢さんを好きになってしまい(本人に打ち明けられた)、"先生"はひどく苦しんだ。

焦った"先生"は、禁欲的な仏道を信心するKに「精神的に向上心がないものは馬鹿だ」と言い放ち、自分の心(自分もお嬢さんを好きであること)はKに告げず、Kを出し抜いて奥さんにお嬢さんとの結婚を申し出て了承された。

しかし数日後、その事を知ったKは自室で命を絶ってしまった。

大学卒業後、”先生”はお嬢さん(今の奥さん)と結婚し幸せではあったが、ずっとKの事に罪の念を持ち続けていた。そして命を絶つ決心をしたので、最後に”私”に真実を記した手紙を残したのだった。

 

3. こころ 登場人物

地方から上京した学生。"先生"の学問と知識に傾倒し、謎な面のある”先生”の事をもっと知りたいと思っていた。「こころ」は、"私"の目を通して見た"先生"の苦悩を描いた物語と言えます。

(通常小説では「私」という一人称の人物が物語の主人公なものですが、「こころ」では実質の主人公は「先生」と言えます)

はっきり書いてはいないですが、先生と私の付き合いは数年に渡る長いもの(高校生の頃~大学卒業まで)で、先生は哲学のような学問が専門で、"私"も同じような領域を勉強していたことから、先生に傾倒したのだと思います。

先生

学識豊かな男性。新潟出身。奥さんと二人暮らしで、大学卒だが、財産持ちだからか働いていない。毎月決まった日に雑司ヶ谷の霊園に墓参りに行く。

時々解釈に困る戒め(いましめ)のような発言をすることがある。(「恋は罪悪」、「人間全体を信用しないんです」、「平生はみんな善人だが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです」など)

”自分の裏切りのせいで親友が亡くなった”と苦しみ続けていて、明治天皇の崩御と乃木大将の殉死に触発され自分も絶命を決意する。

お嬢さん(後の奥さん)

静という名前で、綺麗な人。先生とは仲の良い夫婦。もともとは先生が住んでいた間借り先の娘だった。ちなみに物語にはお嬢さんの心理描写はぜんぜんない。

"先生"の同郷出身の幼馴染じみ。実家が寺だが、中学の時医者の家に養子に出された。東京に出て来たとき先生と同じ下宿に住んでいた。

医者になることを拒否し、大学で別の学部に入ったため養家に勘当され、学費のため夜働き、過労と実家からの勘当で神経症のようになってしまい、それを"先生"が心配し、同じ間借り先に住まわせた。

厳しい仏門を信心していたので、お嬢さんに恋をしてしまった事に悩んでいた。頸動脈をナイフで切り亡くなる。命を絶った時の遺書らしき手紙には「自分は意思が弱いのでこの世を去る」「もっと早く世を去るべきだったのになぜ今まで生きていたのだろう」という事が書かれていた。

間借り先の奥さん

"先生"が学生の時住んでいた間借り先の主(未亡人)。奥さんの母親。

"先生"が自分の境遇をすべて話すと、"先生"の事を親戚のように扱ってくれるようになり、お嬢さんと”先生”が接近することを望んでいるような感じがあった。一方、Kを一緒に住まわせる事には反対していた。

4. こころ 考察・テスト解答のコツ・感想

考察

先生が私に遺書を残した理由

以前から "私" は "先生"の抱えている悩みが何なのかを知りたがっていて、それに対し先生は「たった一人でいいから人を信用して死にたいと思っている」「自分の過去についていつか話す」と約束をしていました。

先生が自分の心の内を"私"に伝える決心をした時、"私" が実家に帰郷していて直接会うことが出来なかったので、手紙を介して伝えられた。

Kが自ら命を落とした理由

高校生の頃テストでこの設問があった時、自分は「失恋のショックではなく、友人に裏切られた事で傷つき亡くなったと思う」と回答した記憶があります。

失恋は辛いですが、それで絶命とまではあまりないですよね。親友だった筈の"先生"から受けた「裏切り」は、少し前まで神経症気味で精神的に拠り所のなかったKにとっては、さぞかし辛いものだったのだと思います。せめて"先生"が正々堂々と恋の勝負をしかけてきたら、違う結末になっていたのかもしれないと思います。

(他の回答としては「Kは信心していた道を貫き通せない自分が嫌になった」などもあると思います。元々精神不安定だった上、失恋もして、何でも打ち明けられる親友には裏切られ、自分の目指す道も突き詰められず、家族とも疎遠、という複数のことが重なった結果かもしれません)

テストのコツ

「こころ」についてというより全般的な話になりますが、国語の問題を解くコツの1つとして、「出題者の意図を理解する」ということがあると思います。例えば上記の問題(Kはなぜ自ら命を絶ったのか)ならば、出題者は『テスト解答者が、Kの深い心理をちゃんと推し量れているか』を見ていると思います。

「出題者の意図を理解する」ことは、国語だけでなく他の科目のテストでも有効だと思います。例えば4択問題で解答A,B,C,Dがある時は、Aは全くの大ハズレ、Bは紛らわしい回答、Cは正解、Dは違うっぽいけどもしかして? という選択肢の置き方を出題者がしていることがあり(※A~Dの順番はもちろん問題ごとに違います)、ある程度勉強していれば明らかに違う回答ははじくことができ選択肢が狭まり答えが選びやすくなります。

個人的な感想

今回読み返して改めて、夏目漱石の小説は、細やかな人物描写で文章だけで人物の人となりや雰囲気が伝わって来て面白く、さすが文豪と呼ばれる人の作品は凄いと思いました。そして同時に以下の事も思いました。(超個人的感想です)

・先生は、妻(お嬢さん)にKの事件の真相を隠し通しましたが、自分がもし妻の立場だったら、打ち明けてくれた方が良いかも、と思いました。(何だか分からないわだかまりがあるのは嫌なので) ただ、その一方で、もし奥さんが真相を知ったら、悲恋で命を絶ったKの怨念のようなものを奥さんが感じて苦しむ、という別の苦しみが生まれる気もするので、先生はそれも考えて隠し通したのかなとも思った。

(知ったとしても、奥さんは多分先生のことは拒否しないと思うし、先生は言うことで少し楽になるかも知れないが、奥さんの心の負担は増える)

・Kは悩みとか苦しみが内側に向かう自責タイプだと思いますが、もし他責タイプだったら、先生がさされて別の事件なっていたのではとも思う(ニュースで耳にする男女絡みの事件はそういう感じ)

 

・先生が遺書を残した年は1912年で、このwebサイト内であらすじをまとめている「おしん」と同時代だなーと気づきました。(1912年当時おしんは11歳の設定) かたや子供なのに家の為に奉公先で働きながら必死に生きるおしん(おしんは実話を参考にした物語で、明治・大正時代、働く子供は実際にいた)、かたや先生は、大人なのに財産で暮らし家に居るだけ。働いたりすれば少しは気が紛れたのでは?と思った。(苦しみを忘れる為に何か奉仕行為に没頭したり、亡くなったKの分まで社会に貢献しようと思うとか)

そもそも、親友を押しのけてまで得た妻(お嬢さん)を幸せにせず、一人残して自分は命を絶つって、なんなんじゃ、とも思ったりも‥。「利己心が大切な人を苦悩においやることもある」ということが読み取れて青少年にとって考えらせられる作品なのは分かりますが‥

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みずのと

●不朽の名作~最新ものまで色々なドラマや読書を日々楽しんでします ●普段の仕事は会社員で文章を分かりやすくまとめる仕事をしていたことがあります ●東京在住

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