アニメ「アルプスの少女ハイジ」の簡単なあらすじと、原作小説との違いをまとめました。
「アルプスの少女ハイジ」は19世紀末に書かれた児童文学が原作で、日本ではアニメが有名ですが、アニメと原作小説では内容が違う部分があります。
アニメ「アルプスの少女ハイジ」のあらすじ
放映年:1974年(昭和49年)
まずはアニメのストーリーを紹介します。
あらすじ
アルムでの暮らし
スイスの少女・ハイジは、世話をしてくれていたデーテ叔母さんが出稼ぎに行くことになり、5才の時にアルプスの祖父の家に預けられます。
おじいさんは気難しく村人から敬遠されていましたが、ハイジにはとても優しくしてくれ、ハイジはアルプスの自然に囲まれのびのびと育ちます。
フランクフルトに行く
8才になったハイジは、デーテおばさんに強引に連れて行かれ、ドイツのフランクフルトで、お金持ちの家の体の弱い少女・クララの話し相手をすることになります。
ハイジはクララと仲良くなり勉強で字も覚えることができましたが、慣れない都会暮らしのストレスで夢遊病になり、1年後、故郷に帰されます。
結末
故郷に戻ったハイジはたちまち元気を取り戻します。冬の間はおじいさんと麓の村で暮らし、学校に通いました。
翌春、クララが静養を兼ねてハイジの元を訪ねて来ます。しばらく山に滞在したクララは、みなの支えと健康的な生活のおかげで、立って歩けるようになります。
(おわり)
主な登場人物
以下に登場人物・動物を紹介します。
ハイジ
1才で両親をなくし、母方の祖母やおば(デーテ)に育てられた。物語では5~9才位までが描かれている。名前は洗礼名のアーデルハイドに由来する。
ハイジのおじいさん
ハイジの父方の祖父。年齢は70才(ハイジが5才の時)。集落から離れた山の中腹に1人で暮らしている。周囲の人たちからは、おんじ・アルムおんじ、と呼ばれている。(正式な名前は不明)
おじいさんの過去は後半の「考察や感想」の項にまとめました。
デーテおばさん
ハイジの叔母。ラガーツ温泉のホテルでメイドをしていた時にお金持ちのお客さんに声をかけられ、その一家のお屋敷で働くためフランクフルトに出稼ぎに出た。
ペーター
ヤギ飼いの少年。ハイジより6才年上。古い小屋でおばあさん・母親と暮している。
夏の間、村のヤギの放牧を任されていて、おじいさんには”ヤギの大将”と呼ばれている。
ペーターのおばあさん
目が不自由で、ハイジが家を訪ねて来てくれるのを生きがいにしている。
ヨーゼフ
おじいさんの飼い犬。種類はセントバーナード犬。
→日頃どーんと構えて寡黙なヨーゼフですが、ハイジと再会し、ハイジやヤギたちと飛び跳ねるシーンでの跳躍っぷりが面白かったです。
ユキちゃん
白ヤギ。他のヤギより小柄で、ハイジに懐いている。(羊ではなく山羊です)
→キャラクター化していない自然のままの動物を、こんなにかわいく描かれているのがすごいと思いました。
ピッチー
野鳥の雛。種類はヒワ。大雨で弱って落ちていたので、ハイジが拾ってしばらく世話をした。
クララ
フランクフルトのお金持ちの家の一人娘。ハイジの4才年上で12才。体が弱く足が不自由で、いつも車いすに乗って室内で過ごしている。母親は既に他界している。
クララの病気の詳細については「考察や感想」の項にまとめました。
ゼーゼマン
クララの父親。仕事でヨーロッパ各地に行っていることが多く、家にはたまにしか帰って来ない。良い紳士で、ハイジにも優しく接してくれる。
ロッテンマイヤー
ゼーゼマン家の家政婦で家のこと全般を取り仕切っている。厳しく神経質な性格で、ハイジを常識のない子どもとして度々叱る。動物が苦手。
おばあさま
クララの祖母。優しくて遊び心があり、子供たちの遊び相手をしてかわいがってくれる。
セバスティアン
ゼーゼマン家の執事。ハイジを心配し気遣ってくれる。
お医者さん(クラッセンさん)
クララの主治医。(原作では境遇が詳しく書かれていて、最後にハイジの後見人の一人になります)
先生
クララの家庭教師で、ハイジも授業を受けた。話がやや回りくどい。
ハイジはどこの国が舞台?
「アルプスの少女ハイジ」の舞台となった国はスイスとドイツです。
・マイエンフェルト(スイス):ハイジの故郷の近くの町。スイス東部に位置し、リヒテンシュタインやオーストリアに隣接する地域
・デルフリ村(スイス):ハイジとおじいさんが暮らしていたエリアの麓の村で、マイエンフェルトの近くの設定。
デルフリは「小さい村」という意味で、物語内では特定の村名は出ていませんが、イェニンス村がモデルだと言われています。
・フランクフルト(ドイツ):クララとゼーゼマンのお屋敷の所在地
「アルプスの少女ハイジ」原作の内容
以下では原作について紹介します。
■原作者:ヨハンナ・シュピリ(スイス人女性)
■刊行年:1880年・1881年
「アルプスの少女ハイジ」は、もともと「ハイジの修行時代と遍歴時代」「ハイジは習ったことを使うことができる」の2冊として刊行された物語です。
(1部はハイジがフランクフルトから故郷に戻るまで、2部がそれ以降)
フランクフルトでの騒動の様子などコミカルなシーンも原作もアニメと同様で、とても面白く、2021年に発売された上記の新訳版もとても読みやすかったです。
アニメと原作の違い
次にアニメと原作の違いを紹介します。
アニメは基本的に原作小説に忠実に作られていますが、下記の点は設定が違います。
原作との違い① 宗教のエピソード
原作では、ハイジはフランクフルトでお祈りの大切さを教わり、帰郷後もお祈りや賛美歌を読むのを習慣にして、そ周囲に影響を与えます。
おじいさんはハイジがきっかけで信心を取り戻し、村人との交流を取り戻し、クララの主治医も、ハイジに賛美歌を朗読してもらったことで、実娘を亡くした辛さから回復します。
一方、アニメではキリスト教のエピソードは少しで、賛美歌を読んだり牧師が登場する位です。
アニメは世界での放映を視野に入れて製作していたので、どの国の視聴者でも馴染めるように宗教の話は減らしたのだと思います。
原作との違い② ペーターのキャラ
原作のペーターは、ハイジとクララの仲の良さに嫉妬してクララの車いすを壊し、その後捕まることに怯える展開になっていて、アニメほど善良な感じではないです。
原作が世に出た当時「農民への偏見だ」という批判もあったようですし、アニメでは好感度の高いキャラクターにしたのだと思います。
原作との違い③ アニメ独自の設定
犬のヨーゼフやピッチーは原作には登場せず、ユキちゃんが処分されそうになる話も原作にはありません。
また、クララのおばあさんの食器演奏会や森へのハイキングの話もなく、ロッテンマイヤーさんはアルプス滞在には同行しません。
これらは話を膨らませるためにアニメで設定したのだと思いますが、原作に沿ったイメージであり、よかったと思います。
ペーターのキャラクターの変更について深堀り
アニメ化でペーターが親しみやすい少年になり、その代わり車いすを壊したのがクララにのせいになっているのが気になりました。
ほかにもアニメでは、クララは物を自慢したりハイジの帽子を古いと笑ったり、ハイジを困らせるシーンもありますが、原作ではそういった感じはほぼないです。
(フランクフルトのパートはロッテンマイヤーさんが騒いでるシーンが多く、クララの存在感が薄い)
またハイジも、原作では(特に後半)ペーターに字を覚えるよう脅したり指図するなど、おせっかいさが垣間見える時があるのですが、アニメではただただ天真爛漫なキャラクターになっています。
wikiに「女性優位の原作を、アニメは男性優位に変えてある」という記述がありました。そういう言われると確かに、ペーターを立てるためにハイジを妹分キャラっぽくしたようにも感じます。
クララも、原作では目立たず大人しいのをいいことに、アニメでは少し我慢の効かないわがままな娘風に変えているように思えました。(しかも車いすを壊したことも擦り付けられている)
「より頑張って心理的にも成長して立てるようになった」というストーリーは感動的ですが、客観的な目で見ると、キャラクターが原作者の思い描いた姿と微妙に変わっているのは、ウーン、と思います。(そういう意味でも原作もぜひ読んでみて欲しいです)
2015年の実写映画では、ペーターは原作に近いキャラでそれでも面白かったので、アニメも原作を生かしたキャラでも良かったのでは、と思いました。
(ちなみにwebサイトの書き込みにあったのですが、昔のヨーロッパの物語では、羊飼いが頭が良くない風に描かれていることがあり、その背景には、羊飼いなど内陸だけで過ごす子供は海産物を十分に摂取できず、その結果ヨウ素不足に陥りやすく成長に影響がある場合があったという現実があったそうです)
考察や感想
色々書きましたが、アニメはスイスの美しい自然が見事に描かれていて、ストーリーも面白くい作品です。
以下は物語の考察や感想です。
クララの病気は何だったのか
クララは歩けない少女です。原作小説でもアニメでもクララの病気が何なのかの病名は描かれていませんが、栄養や日光不足による”くる病”という病気だという見方があります。
著者の父親が医者で、自宅に診療所が併設されていたため、著者にとって様々な病や患者が身近で、それがこの小説にも生かされていると言われています。
クララの病気以外にも、ハイジが夢遊病になるくだりは、自分も夢遊病だったことがあったので興味深かったです。
おじいさんの過去
原作小説によるとおじいさんの過去は以下の通りです。
おじいさんは、立派な農園を所有する家の長男だったが、悪い知人と付き合い、資産を食いつぶし、両親は心を痛めて亡くなり、弟も出てき行方不明になった。
その後ナポリで傭兵(他の国で雇われ兵になること)になり、さらに時が経過して息子を連れて地元に帰り(妻には先立たれた)、息子を親戚に預けようとしたが誰にも相手にされず、立腹し今の村に来た。
息子は大工になりハイジの母と結婚したが仕事で事故死し、ハイジの母もショックで間もなくなくなった。
村人たちはおじいさんの信心がなかった罰だと噂し、それ以降おじいさんはますます偏屈になり人との交流をしなくなった。
おじいさんが放蕩息子でヤンキー時代があったというのは意外でした。
戦場で負傷者を世話した経験があったので、アルプスに来たクララの世話も慣れた手つきだったという設定でした。
デーデについて
子供のころ見た方の中には、ロッテンマイヤーやデーテを悪役だと思っていた方もいるようですが、大人目線で見ると、デーテなんかは自分の人生もあるだろうから、その行動はやむを得ないよなとも思います。
そして結果的にデーテのやったことは全部プラスになっていますしね‥(ハイジの存在はおじいさんに大きな幸せをもたらし、ハイジもアルプスでの暮らしが合っていて、フランクフルトで字も覚えることができ、裕福な後見人も得た!
ゼーゼマン家側も、デーテがハイジを連れて来てくれたおかげでクララが歩けるようになったようなもんですもんね)
ハイジは成長していない?
自分がいい大人なのでおじいさん目線で「ハイジみたいな孫が現れたらかわいいだろうな~」と見てしまいつつも、「それにしてもハイジは全然おおきくならないな~」と思いながら見てました。
しかし冒頭と後半のアニメの絵を見比べると、顔も幼さが抜けててちゃんと成長してました。多分話し方が変わらないせいで幼く見えたんだと思います。
年齢は、最後の方は8~9才ということで、思っていたより年上でした。
おじいさんの生活
おじいさんもハイジも日が落ちる前に寝るということで、18時頃寝るの?早っ!と驚きましたが、スイスの6~7月は(緯度が高いので)日没が21時過ぎなので普通の時間ですね!
逆に、ペーターはそんな遅い時間まで放牧の仕事をしてて、子供なのに大変だ‥
おじいさんの家は必要なものだけ揃っていてとてもきれいに片付いてて、現代のミニマリストを先取りしているかのようでした。(人間関係も断捨離?!)
トライのCMのこと
家庭教師のトライのCMでハイジのキャラが使われていますが、作品の扱われ方を残念に思うファンもいるだろうし、当時アニメ制作に魂をかけていた制作者がかわいそうというか失礼な気がします。
きっと、今ライセンス管理をしている人の中には作品へ思い入れが強い人がいなくて、作品を守る人がいないんだろうと思いました。
(作中にも家庭教師の先生が登場するので、全く関連がないわけではないですが‥)
「アルプスの少女ハイジ」を見れる動画配信
アニメ
ハイジのアニメは下記動画配信サイトにて視聴できます。(各サービスともトライアルの無料視聴期間があります)
dアニメストア | ○ 公式サイト |
U-NEXT | ○ 作品ページ |
hulu | ○ 作品ページ |
AmazonPrimeVideo | ○(dアニメストア for Prime Video) 別途料金必要 作品ページ |
なお、U-NEXTでは2015年制作の実写映画も見れます。(ハイジ役の女の子がキュートで、ロッテンマイヤーさん役がきれいでした)
※本ページの情報は2024月5月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サイトにてご確認ください
関連書籍
アルプスの少女ハイジ・徳間アニメ絵本
こちらはテレビアニメを絵本化した本です。お子さんへの読み聞かせや、ハイジファンの大人にもおすすめです。(A4サイズ位の大きさです)
図説 アルプスの少女ハイジ
物語の舞台となった現地の写真や、当時の生活習慣の解説、原作者シュピリのことなどが載っている図説で、ハイジの世界をより深く知りたい方におすすめです。
ハイジが生まれた日ーテレビアニメの金字塔を築いた人々
ハイジのアニメ化の立役者であるプロデューサー・高橋茂人さんの人生を軸に、制作者たちの舞台裏が詳しく描かれています。
日本のアニメの歴史や、いかに関係者たちが魂を込めて作品を制作したかが分かり、アニメ初の海外ロケハンの話や、若き高畑勲さんや宮崎駿さんのことも書いてあり興味深い内容でした。
(ちなみにムーミンのアニメ化も、高橋茂人さんによるものだそうです)
アルプスの少女ハイジ 小田部羊一イラスト画集
こちらはハイジのキャラクターデザインを担当した小田部羊一さんの画集です。どの絵のハイジもとても素敵でかわいくて色も綺麗で、本当に天才!
(本は売り切れで新品の販売があまりないみたいです)
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