兼近大樹の小説「むき出し」のあらすじ・感想【事実?】

2023年2月4日

お笑い芸人「EXIT」の兼近大樹さんの小説「むき出し」のあらすじと感想をまとめました。

この本はフィクション小説ですが、自伝的物語だとも言われていて、読んだ感じ、固有名詞以外は全部事実のようにも思えます。

(なお私は著者のファンでもアンチでもなく、あまりTVを見ないので存在を知っている程度です)

「むき出し」あらすじ

人気急上昇中のお笑い芸人コンビ「エントランス」の石山大樹の前に、ある夜、週刊誌の記者が現れた。

実は石山には、道を外した過去があった。

北海道の札幌出身の石山は、放置気味で経済的に困窮した家で4人きょうだいの3番目として育ち、殴られるのが日常だったため喧嘩が強くなり、学校では暴れて物事を思い通りにする子供だった。

両親が小学校の時離婚すると母がスナックで働いて生計を立てた。家が貧乏なので石山は進学せす、中学卒業後は建設現場などで働き、やがて夜の世界に足を踏み入れた。

違法行為でお縄になったのがきっかけで夜の世界と縁を切り、上京して芸人を目指した。

「むき出し」感想

才能

まず、著者は文才があるんだなーと思いました。芥川賞などを取った本の中の面白くない本とかより面白かったです。兼近さんは、中学ではまともに授業も受けず、もともとは漢字も苦手だったようですが、話上手だと文章で伝えるのも上手くなるのだなと思いました。

(刊行された際に評判になっていたのは、芸能人だから持ち上げられているのだと思ってました)

ただ、この人の人生が独特だから内容も面白いのかもしれず、次の作品が出てそれも面白くなるかは分かりません。

しかし、色々なことを感じさせられる物語で、場面転換やテンポも良くて、表現が色鮮やかで雰囲気が豊かに伝わってくる感じで、読みやすくて惹きつけられ一気読みしました。

道を外す

不良になり道を外す人の心理が垣間見れるのが興味深いです。幼少期の環境は、何かと祖父に殴られたり、母親が病気で入院していた等で子供だけで生活する時期があったり、家にねずみが出るような状態など、結構厳しいです。

子供をきちんと養育しようという責任感は親によって差があるんだなと思いました。

あとは16才の時に暴力で怪我を負わせた時のエピソードが印象的でした。

石山は母親に付き添われ相手の家に謝罪に行くのですが、そこで相手の家の事情を知り(相手も母子家庭で苦労して暮らしている家だった)、後遺症が残るかもしれないくらい痛めつけてしまったことについて、その時初めて「相手にも人生があって、そんな相手からしたら自分は悪者だ」ということに気づくのです。

その年ではじめてそういうことを考えたのか~、と思いました‥。

 

石山は他にも、小学校ではいじめで同級生を転校に追いやったり、中学では不良として暴れたり、かなりの荒くれ者です。

自分も子供のころ周りには、暴れん坊の男の子や不良と呼ばれる人がいましたが、石山の荒れ方は正直レベル違いです。

自分が同じ境遇に置かれたら、グレないのか?と思うと完全否定できず、誰も主人公を裁けないと思います。十分なものを与えられぬくぬくと恵まれて育った人が、高みから批判するのは違うと思うし、ほんと環境は大きいと感じる。

(ただし彼から被害を被った人が今でも責める気持ちをもつのは当然と思う)

グレてた人の話なので結構ひどい描写もあり(お縄になっていない出来事の方が激しい、前出の怪我を負わせたのも半○しレベル)、人により好き嫌いが出る本かもしれません。

本の面白さを知る

20才のころ捕まって留置所にいた時にガールフレンドから本を差し入れされ、石山ははじめて本の面白さを知ります。

同室のおじさんに漢字の読み方を聞いて懸命に本を読み、自分と同じような考えが書かれていると喜び、いろいろな考え方や見方を知ります。

本に成長させられたというのは良いなと思いました。

その時の取り調べで警察の人に「夢はないのか」「(仲間に信頼されて人望があるのだから)裏の世界じゃなくてもやって行ける。札幌を出た方が良い」と言われた、というのも印象的でした。(そういう一言がのちのちに影響するのだなと)

結局その直後、運命の男と出会ってしまい、地元を離れるのはもう少し後になりますが。

(”運命の人”というのは本の中でそう書かれてるのです。関わりを絶った後も時を経て著者の運命を左右しているのが何とも数奇です‥)

 

賛否両論いろいろあると思いますが、読みやすい本なので興味のある方は読んでみるといいと思います。

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みずのと

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