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「サザエさんの東京物語」長谷川町子の妹・洋子さんのエッセイ

2021年10月2日

「サザエさんの東京物語」は、長谷川町子さんの妹・洋子さんの著書で、町子さんの素顔や長谷川一家の色々なエピソードが書かれています。洋子さんは、朝ドラ「マー姉ちゃん」にも出てくる年の離れた末っ子・ ヨウ子のモデルですね。

朝ドラの原作「サザエさんうちあけ話」とともに読むと深みが増しオススメです! 面白かったので概要と感想をまとめます。(完結にまとめるため敬称略している箇所があります)

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サザエさんの東京物語 概要

長谷川家三姉妹とその母の、子供の頃~晩年のエピソードが書かれています。

身内にしか見せない町子の意外な素顔や、町子のエッセイでは触れられなかった深い話、晩年の姉妹の仲たがい、遺産相続についても読むことが出来ます。

町子さんの素顔

長谷川町子さんは人付き合いが苦手でめったに表舞台に出ない人だったのですが、福岡での小学校時代は殴る蹴るの乱闘もいとわないガキ大将だったそうです。

また、妹・洋子の分の菓子代を洋子さんが幼いのをいいことに平気で毎回せしめるなど、今放送されているサザエさんの平和なイメージからは想像つかない感じでした。(もっともサザエさんの初期は、今とだいぶ違って激しい感じなのですが)

そんな姉だったので、洋子さんにとって町子姉は「意地悪ですごい甘えん坊な姉」で(あと、人一倍敏感で、話が面白い人だったそうです)、町子さん本人も「サザエさんよりいじわるばあさんの方が自分の地のままで書けて気楽だ」と言っていたそうです。

町子には実はまり子以外にもう一人姉がいて、7才の時亡くなってしまったそうです。なので、6才下の洋子が生まれるまでは、町子は3姉妹の末っ子だったわけで、甘えん坊というのも分かる気がしました。

町子は転校して入った東京の学校に馴染めなかったのを境に内向的になってしまい、外で大人しい分、まり子姉いわく「(町子は)人の5人分くらい騒がしい」というくらい、家で喜怒哀楽の全てを発散していたそうです。(超内弁慶ということですね)

洋子さんは強い姉たちに気圧され、すっかり萎縮し大人しい子になってしまったそうです。

串団子の姉妹

まり子・洋子はそれぞれ結婚したものの、2人とも若い頃に夫を失くし、また家族で出版社を経営していたので、3姉妹はずっと一緒に暮らし続けていました。(洋子が結婚していた時は、夫が長谷川家の敷地内に同居した)

洋子の夫が亡くなった時、2人の娘はまだ学齢前と幼かったので、子供は姉妹皆で育てたような感じだったそうです。女ばかりの一家ですね。

まり子と町子は自分たちがいつも一緒なことを「串団子」と言っていいて(だんご三兄弟的なかんじ)、共に暮らすことで心強く楽しいことも多くあったものの、洋子は意見の強い姉たちに従わざるを得ず苦しかった経験もあったようです。

(大学の進路を、町子姉の意見で行きたくもない文系に行かされたり、娘の通学についてまり子姉が”姪が誘拐されないか心配”と譲らず、禁止されている車通学を続けさせて、洋子が学校に再三きつく注意されたり)

きょうだいの別れ

洋子が60才間近の頃、家が古くなったので近くの所有地に新築をすることが決まりました。姉たちは当然洋子も一緒に暮らすつもりでいました。(母は高齢で認知症になり長期入院していた)

ところが洋子は、姉たちが先に新居に引っ越したあと、一人で1か月間古い家で過ごして、これまでにない自由さを感じて、考えた末、自分は思い出の多い古い家に残り、姉たちとは別々に暮らすことを決意しました。

家は徒歩10分位の場所なので、洋子としては、今まで通り食事をしたり一緒に出かけたりするつもりでいたのですが、姉たちは洋子の独立宣言が許せなかったようで、姉妹の関係に溝ができ、関係が断絶してしまいました。

1992年に町子が72才で急死した際も、まり子姉が秘書に「洋子にだけは言うな」と口止めしていたせいで、洋子さんは町子姉の死をすぐに知ることが出来なかったそうです。

まり子さんは2012年に94才で他界し、洋子さんは何度も手紙を出したり、誕生日には花を贈ったりしたもの受け取ってもらえず、最後まで和解は実現しなかったそうです。「マー姉ちゃん」を視聴している身としては、あんなに仲の良かった姉妹が‥としんみりします

(その後、ヨウ子さんは彩古書房という出版社を娘さんとともに設立し、興味のあった児童心理学や育児書の出版をされました)

遺産のこと

洋子さんは、煩わしい話し合いを避けたかったので、町子の遺産は全て放棄しました。(母が亡くなった時も放棄していた)

町子の死の翌年、洋子の家に税務署が訪ねてきました。町子の遺産額があまりにも莫大な額で、普通放棄する例ないものだったので、「裏で貰っていてるのでは」と洋子さんに疑いがかかったそうです。

しかし税務署は事前に洋子さんの財産を調べた結果、少なかったのでその疑いが薄れ、念のため聞き取りに来たのでした。

洋子さんは、理解されるか分からないと思いながらも、「余生は自分の好きなように暮らしたかった」という心の内を話し、あっさり理解して貰えたそうです。

(ちなみにこの時のやりとりで、洋子さんが「(遺産は)新聞には30億と書かれてましたが」と聞くと、税務署員が「とてもそんな額じゃない、もっと莫大な額だ」と答えたとあるので、きっと100億は下らないですよね、、汗)

感想

amazonのレビューには、絶縁になった理由がちゃんと書かれていないという意見もありました。が、姉との関係が難しい面があったことは随所から分かり、私は読んで良かったです。

「どこの家庭でも大変なことがあるんだなー」と思えて、変な言い方になりますが癒され、60才目前で自分の人生を行きるために踏み切った洋子さんに感銘を受けました。

「機関車に引かれる貨物列車同様、姉たちの引いたレールの上を走ってきた」「生まれてきた目的とは、自分に与えられた相応の器の中で転んだり、すべったりして生きていくことではないだろうか」という言葉が印象的でした。

女性の集団って(本当に人によりるのですが)、同調を絶対とする雰囲気がある場合があり、それが過ぎると息苦しいのかなあと思います。(一方で、どんな時も味方になってくれる存在の安心感は大きいのですが)

あと”一人の時間を持ってみてすごい自由を感じた”、というも分かる気がします。家族と暮らしていると、良くも悪くも家族に影響される時間がとても多いと思うので。

(私も20代で一人暮らしを始めた時、家事や買い物などすべて一人でやってもなお、時間が有り余るように思った記憶があります。家族暮しだとテレビも流れで一緒に見てしまったり、風呂の時間も家族に合わせて調整したりなどだったので)

何はともあれ長谷川町子さんや一家のことを知ることができ、おすすめの本です。

※2015年に発行された文庫本版は、単行本になかった内容が2章追加されていて、写真も当初版より多いので、文庫本がおすすめです。

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みずのと

●不朽の名作~最新ものまで色々なドラマや読書を日々楽しんでします ●普段の仕事は会社員で文章を分かりやすくまとめる仕事をしていたことがあります ●東京在住

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