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「アドルフに告ぐ」あらすじ|手塚治虫の最高傑作

2022年10月14日

手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」のあらすじを紹介します。

「アドルフに告ぐ」は、独裁者・アドルフ・ヒトラーと同じ名を持つ少年2人が、戦争の最中、時代の波に巻き込まれる様を描いた物語で、手塚治虫の最高傑作の1つです。

「アドルフに告ぐ」あらすじ

連載:1983年~1985年(週刊文春で連載)

話は「ヒトラーには実はユダヤ人の血が流れている」という秘密を巡って進みます。(その設定自体はフィクションです)

アドルフに告ぐ 1巻あらすじ

1936年、ベルリンに留学中の日本人青年・峠(とうげ)勲が、何者かにあやめられた。

勲の兄で新聞記者の峠草平は、現地で弟の死の真相を追い、弟が学生運動に関わる中でヒトラー関する極秘文書を手にしていたこと、事件にドイツの党員が関わっていることを掴んだ。

 

神戸に2人のアドルフという名の少年がいた。アドルフ・カウフマンはドイツ人外交官の父と日本人の母を持つ少年で、アドルフ・カミルはユダヤ人のパン屋の息子だった。

当時ドイツ本国ではアドルフ・ヒトラーによりユダヤ人を排除する政策がとられていた。双方とも親から、仲良くならないよう注意されていたが、カミルがカウフマンをいじめから助けたのがきっかけで、2人は親友になる。

やがてカウフマンは、父親がヒトラーの文書の手がかりを探す中で急逝し、父の遺志を継ぐためドイツに渡って、党の幹部養成学校に入学した。

アドルフに告ぐ 2・3巻あらすじ

事件から二年、神戸に戻った峠はようやく文書を手にする。文書(ヒトラーがユダヤ人であることを証明する出生証明書の写し)は、勲の恩師・小城に託されていた。

政権転覆を狙って文書を公表することを考えたが、峠は特高警察やドイツからの追手に危険な目に遭わされ、文書は奪われないようにするため、小城の教え子であるパン屋のカミルに託された。

ドイツに渡ったカウフマンは、ユーゲントで優等生として表彰も受けるほどになっていたが、ユダヤ人の少女・エリザに恋をしてしまい、一斉摘発の直前、エリザを逃亡させた。

 

その頃神戸のパン屋のカミルは、仲間を救うためリトアニアに渡った父親と連絡が取れなくなっていたが、父親はドイツに送還され、訓練中のカウフマンにより始末されていた。

そんな中カミルは、カウフマンに頼まれ、日本に渡航したエリザを家で預かることになった。

アドルフに告ぐ 4巻あらすじ

小城やカミルは、関係者を通じて文書をスパイに提供しようと試みるが、情報提供者が摘発され失敗に終わる。

峠は、ひょんなことからカウフマンの母・由季江が開いたドイツ料理店で働くようになり、懇意になった。

 

数年経ち、成長したカウフマンは党の思想に染まり切り、残酷な迫害活動に尽力していたが、上司の命令に従わなかったことで左遷されてしまう。

アドルフに告ぐ 5巻あらすじ【最後】

1945年、カウフマンはヒトラーの文書を取り戻す任務で日本に帰国するが、思い人のエリサはカミルと婚約していた。

するとカウフマンはエリザを手籠めにして絶望の淵に落とし、峠と再婚した母とは縁を切る。

カウフマンは特高のごうもんでカミルらにありかを吐かせ、ようやく文書に辿り着くが、ヒトラーは死去した後だった。

神戸を空襲が襲い、峠は聴覚を失い、由季江は峠との子を産んだ後なくなった。

 

第二次世界大戦後の1948年、ユダヤ人の国・イスラエルが建国された。

カウフマンはナチの残党狩りから逃げる中、レバノンでパレスチナ解放戦線に加わった。

時が経ち1973年、カウフマンは、イスラエル軍のカミル率いる隊の爆撃で妻と娘を失ってしまう。

憎しみに駆られたカウフマンは、カミルを呼び出し復讐しようとするが、カミルに撃たれて絶命する。

感想

小説のような深い読後感で、何日も心に重く残りました。

手塚治虫の漫画を読んだのは、この作品が初めてでしたが、「漫画の神様」と言われるゆえんが分かった気がします。

なお雑誌連載中に病気による休載期間があったため、未完というわけではないですが、最後の方は時代が飛び飛びで、ダイジェスト的になってしまったそうです。

フルで描けた場合、どういうストーリーになったのかなあ、読んでみたかったなと思いました。

ちなみに連載していた雑誌は文春です。これだけ面白いと、この漫画目的で雑誌を買ってた人も多かったのではと思います。

 

以下に見どころをまとめました。

戦争がおよぼす影響

2人のアドルフ少年は、1巻ではまだかわいい子供だったのですが、ハーフのアドルフは入党後は常軌を逸した思想に染まり、やがて2人は訣別します。

戦争が、元々罪がなかった人を変え、人々を引き裂くということがひしひしと伝わってきて、切なくて心が痛くなりました。

(いいことが何もない、ということが分かる。)

キャラクターが生き生きしていてストーリーも唯一無二

脇役も含めて登場人物の人物像が伝わって来て、本当に実在していたようにさえ思えました。

ストーリーには史実が織り込まれている一方、特に後半は独自の展開が圧巻で、読むのを止められない面白さで、かといって展開に無理はなく、とても腑に落ちるあらすじでした。

戦時下の話ながらもラブストーリー要素が織り込まれているのも面白さの一つです。

史実を知れる

ヒトラー以外にも、ソ連のスパイ・ゾルゲや関西での空襲のことも描かれていて、さまざまな史実を知れます。(作者は元々、ゾルゲを主役にしたいと思っていたそうです)

 

なおアニメ化はされておらず、内容的に難しいと思います。

重い話ではありますが、歴史を知る意味でもとてもおすすめの漫画です。大人向けの漫画ですが高校生位から読める内容だと思います。ただしヘビーなので、元気な時に読むのがおすすめです。

 

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