手塚治虫の漫画「アドルフに告ぐ」のあらすじをネタバレしない範囲で紹介します。
「アドルフに告ぐ」あらすじ
連載:1983年~1985年(週刊文春で連載)
「アドルフに告ぐ」は、おもに戦前の時代を舞台に、アドルフ・ヒトラーの独裁政権下にあったドイツと、日本に住む、独裁者と同じ”アドルフ”の名を持つドイツ人少年2人が、時代の波に巻き込まれて行く様を描いた物語で、手塚治虫の最高傑作の1つと言われています。
物語は「ヒトラーには実はユダヤ人の血が流れている」という衝撃的な秘密を巡って進みます。(その設定自体はフィクションです)
アドルフに告ぐ 1巻あらすじ
1936年、新聞記者の峠(とうげ)草平の弟・勲がドイツ留学中に謎の死をとげた。
勲は学生運動に関わっていてい、ヒトラーに関する重要文書を入手したことで始末されたようだった。
峠はベルリンで弟の死の真相を追い、事件にドイツの党員が関わっていることを把握した。
同じ頃、日本の神戸に2人のアドルフという名の少年がいた。日独ハーフのアドルフ・カウフマンは、外交官の父から将来ドイツの党員になること期待されていた。
もう一人のアドルフ・カミルはユダヤ人のパン屋の息子で、いじめられていたハーフのアドルフを助けたのがきっかけで、2人は仲良くなった。
ハーフのアドルフの父は、党の命令でヒットラーに関する文書の行方を探していたが、無理がたたり急逝してしまった。
1938年、ハーフのアドルフは、本人の抵抗も空しく、ドイツに渡り党の幹部養成学校に入学した。
アドルフに告ぐ 2・3巻あらすじ
事件から二年、神戸に戻っていた峠草平は、とうとう秘密の文書に辿り着く。勲の恩師・小城に託されていたその紙は、ヒトラーにユダヤ人の血が流れていることを示す出生証明書の写しだった。
文書を手に入れた峠は、政権転覆を狙い、機を見て文書を公にしようと考えていたが、特高に目をつけられ、ドイツから来た追手に追われるなど危険な目に遭った。
文書が敵に奪われ破棄されないよう、文書は小城の教え子であるパン屋のアドルフに託された。
ドイツに渡ったハーフのアドルフは、党に忠誠を尽くし学校で優等生として評価されていたが、ユダヤ人の女の子・エリザを好きになってしまい、ユダヤ人一斉摘発の直前、エリザを逃し日本に渡航させた。
その頃神戸のパン屋のアドルフは、リトアニアに渡った後音信不通になった父のことを心配していたが、実は父親はドイツに送還され、訓練中のハーフのアドルフにより始末されていた。
パン屋のアドルフは、ハーフのアドルフに頼まれ、日本に渡航したエリザを家で世話することになった。
4,5巻では、第二次世界大戦と、成長したアドルフたちの再会と決別、関西での空襲と終戦などが描かれています。
感想
「アドルフに告ぐ」の見どころのポイントをまとめてみました。
キャラクターが生き生きしていてストーリーも唯一無二
脇役もふくめ登場人物の人物像がしっかりと伝わってきて、実在していたようにさえ思えました。
ストーリーには史実が織り込まれている一方、特に後半は「そう来るか」という独自のストーリー展開がすごく、読むのを止められない面白さで、かといって展開に無理はなくとても腑に落ちるあらすじでした。恋愛要素があるのも面白さの一つです。
戦争がおよぼす影響を知れる
2人のアドルフ少年は1巻ではまだかわいい小学生でしたが、ハーフのアドルフは入党後は常軌を逸した思想に染まり、やがて2人は親友ではなくなってしまいます。
戦争が、もともと罪がなかった人を変えてしまい、人々を引き裂くということがひしひしと伝わってきて、切なくて心が痛くなりました。
史実を知れる
ヒトラー以外にも、ソ連のスパイ・ゾルゲについてや関西での空襲のことも描かれていて、漫画を通して史実を色々知ることができます。
(そもそも作者は元々は、ゾルゲを主役にしたいと思っていたそうです)
手塚治虫の漫画を読むのは初めてでしたが、なぜ漫画の神様と言われるのかが分かった気がしました。上手く説明できないのですが、小説のような深い読後感で、何日も心にずーんと残る内容でした。
(なお、雑誌連載中に病気で休載した時期があり、最後の方は時代が飛び飛びでダイジェスト的になってしまったそうです)
すごい作品なのにそこまで知られていないのが信じられない感じです。アニメ化はされていません。内容的に難しいのだと思います。
重い話ではありますが、歴史を知るという意味でもとてもおすすめの漫画です。(大人向けの漫画ですが高校生位~なら理解できる内容だと思います)
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