Netflixで配信中の「極悪女王」を視聴しました!とても面白かったのであらすじや感想をまとめました。
「極悪女王」あらすじ概要
「極悪女王」(全5話)は、1980年代の女子プロレス黄金期に活躍したダンプ松本さんをモデルに、ゆりやんレトリィバァがダンプ松本役を演じる、実話に着想を得たフィクションです。
ダンプ松本の幼少期
埼玉で暮らす少女・香(かおる)の家は、トラック運転手の父が、酒におぼれて暴力をふるい女性問題を起こすなど酷いあり様で、香と妹は父親に怯え、母親は気苦労が絶えない生活を送ります。
高校生になった香は、当時流行していた女子プロレスの大ファンになり、お金を沢山稼いで母親を楽させたいという気持ちでプロレスラーになることを夢見るようになります。
香は、決まっていたパン屋への就職を断り、全日本女子プロレス(全女)のオーディションを受けて練習生として採用されます。
プロレスラーへの道
厳しい訓練がはじまり、早々にプロテストに合格してデビュー戦を決めていく同期がいる中、香は劣等生で遅れを取ってしまいます。
やがて、先輩にいじめを受け同じく遅れを取っていた親友の長与千種が、特技の空手を生かした激しい試合で注目を集め、ライオネス飛鳥とクラッシュギャルズというユニットを組んで人気を博すようになります。
一方香は宣伝カーの運転を行う日々を送りますが、裏方を手伝う中で、女子プロで上に行くにはスター性が第一である事、いかに観客を魅き付けて会場の空気を持って行くかが大事だと学びます。
極悪同盟で大フィーバー
香はデビュー後、悪役のヒール軍団に入りますが、元々優しい性格のためリングで悪役になり切れず失敗します。
さらに、時代の寵児となった千種は別世界の人となり、実家で問題も発生し(母親に頼まれていた千種のサインを父親が売って金を得ていた、仕送りが父親の手中に渡っていた)やり場のない怒りを抱えます。
この苦しみをバネに、香はリング名を「ダンプ松本」に改名し、どきつい悪役メイクと衣装で凶器(チェーン、フォーク、竹刀など)を携え、クラッシュギャルズのライバルとして大暴れして流血試合を行うようになり、これが観客にうけて大ブームを起こします。
とはいえ悪役としての注目なので、観客席からの帰れコールにはじまり、誹謗中傷の手紙、カミソリまでもが届き、世間からの憎しみを一身に受けます。しかし香は屈さず悪役に徹し、多額のギャラを得て母親に一軒家を買ってあげます。
1985年の髪切りデスマッチでは千種に勝利し、地上波放映されるなか千種の髪をバリカンで刈り、極悪ぶりを見せつけます。
全女引退
1988年、選手第一ではない全女のやり方に疑問を抱いた香は、突如引退を宣言します。引退試合では延長試合で千種と組んで戦い、場内に感動を巻き起こします。
感想
レビューや解説、おまけ情報を要点ごとにまとめました
ストーリーがとても良い
当時私は7才前後で、記憶はおぼろげながらもTVで試合を見て当時の大流行を肌で感じていたので、40年の時を経てこのドラマを通してダンプさんの人生を知ることができ、人知れない苦労を知り、心を打たれました。本当に良いドラマです。(近い未来にアメリカとかで賞を取るのではないかと思ってしまいます)
物語のテーマは、少女たちの「強くなりたい」という気持ち です。
1984-85年当時のダンプさんは24才位、長与千種さんも20才位です(ダンプさんとは同期ですが長与さんは中学卒業後に入門したためダンプさんの方が4才年上)弟子のブル中野さんに至っては何と17才位!
そんな20才前後の少女たちが、あのプロレスブームを牽引していたというのも、今考えると本当に驚きです。
ドラマ内では描かれていませんが、wikipediaによると長与さんは稼いだギャラで親の借金1億のうちの大半を返済したそうです。ダンプさんも親のことで子供の頃から苦労している‥。そういったバックグラウンドがあるから、あんな壮絶な環境で諦めずに戦い続けられたんでしょう。(戦うしかなかった、という感じでしょうか)
タイトルについて
ドラマの英語タイトルは「Dump The Heel」ですが、これは1985年にダンプ松本さんが出した曲のタイトルで、ドラマのオープニング曲にもなっています。(オープニング曲はゆりやんが歌ってます)
当時が忠実に再現されていて懐かしい
全体を通して当時の様子がかなり忠実に再現されている部分が多いそうです。(試合の様子、衣装、建物のつくりなど)
試合は、実際の試合のように緻密な描かれ方をしていて(手抜き感が全くといっていいほどない)、監督の白石さんがプロレス好きだということで、納得です。
経営者一族の稼ぎっぷりもドラマ内で表現されてました。(ビルが途中で新しい建屋に変わりますし、最後の方の事務所の用品が高級ブランドの椅子になってたり)
見ているうちに、ビューティーペアーの曲を「聞いたことある!」と懐かしく思ったり、ダンプの極悪の衣装や、長与千種が長崎出身とか、断片的な昔の記憶と当時の興奮が蘇ってきました。そして不思議なことに、子供の頃の面白いものを純粋に楽しんでいたころのような心もちになりました。
当時を知る人は勿論のこと、知らない人が見てももちろん面白いと思います。
※ダンプさんの引退試合の動画は、全女公式youtubeから近日中に配信されるそうです
俳優陣の演技がすごい。
役者たちの体を張った演技も半端なかったです。
ドラマのプロレスを監修した長与さんご本人が、俳優さんたちを「2年間選手だと思って接していた」と言っていました。
ゆりやんはダンプになりきってましたし、唐田さんは演技力も高いし、きりっとしたかわいさでとても良かったです。紋付袴姿がめちゃかっこいかったし、剛力さんも含め80年代ファッションがかわいい。
ドラマの配信開始日の9月19日は、唐田さんの誕生日なんですね!頑張った唐田さんへのプレゼントのようで何だか泣けてきます。
記者会見やドラマに関するインスタ写真などで唐田さんの映像や写真を見ましたが、ゆりやんのギャグでめちゃ笑顔だったり、千種さんたちと写真に写ってたり、私はそのような生き生きとした素顔の彼女を初めてみたので、ものすごーーく頑張って役に真摯に向き合って、このドラマを通してかけがえのない絆とか沢山のものを得れたんだな、本当に良かったなと思いました。若い子たちが仲良くて幸せそうだと何かうれしいです
ダンプのマーケティング思考
ダンプさんが、観客からどういうプロレスラーが望まれているを考え抜いてヒールとして振る舞っていたということを知りました。懸命に競技に取り組んでいると客観的立場に立つのは難しいと思うので、客観的視点を持ち合わせていてすごいなと思いました。
なお、メイクは当時の音楽バンド・KISSのメイクを参考にしていて、動きが小さいと遠くの席から見て悪役だかそうでないかの区別がつかないので、遠い席からも分かるよう、大きい動きで悪役ぶりをアピールしていたそうです。(あの竹刀を振り回しながら客席を歩く様子ですね)
当時の女子プロの試合って、劇やショーのようなものに近い要素があったんだなとも思いました(コスプレ風衣装だったり悪役演出とか)当時のファン層は10代中心で、自分も子供だったので、演出だと思わずまるまる信じて観ていたわけですが。
以下、少し話が逸れますが、ダンプ松本さんの演じていた役割ってアニメの「アンパンマン」でいうバイキンマンみたいなものだな、とふと思いました。
あれは敵のバイキンマンがいるから盛り上がるのであって、もしバイキンマンがいなかったら「今日もアンパンマンがお腹の空いた子を助けましたとさ、おしまい」で終わってしまい、幼児も全然ハラハラしなくて熱中しないでしょう。
そう考えると一体「悪」ってなんだろう?って思えてきます。
人間の腸内の菌のばあい善玉菌と悪玉菌があるけど、悪玉菌がゼロになることはないしゼロになればいい訳でもないようです。
生活している中での「悪」については(明らかな犯罪を除外するとして)、1人1人に憎む心のようなものがあって、それを何かにぶつけたいから、目の前にある丁度良い邪悪そうなものを「悪」としているのか‥?(ダンプさんはその憎悪をぶつけられる役を演じていたということ)何か考え続けると良く分からなくなってきました‥