「星の王子さま」のあらすじを短くまとめました。
「星の王子さま」はサン=テグジュペリ作の童話で、飛行士の"僕"が、機体の故障で不時着したアフリカの砂漠で、小さな王子さまと出会う話です。
どんな話なのかや登場人物、何が言いたいのか、作者についてをまとめました。
星の王子さま あらすじ
挿絵の水彩画も著者が描いたものです。
王子さまとの出会い
6才のとき、僕は本の挿絵に感動し、自分でも本の世界に思いを馳せて初めての絵(ゾウを飲み込んだ大ヘビの絵)を描いた。しかし大人は絵を理解してくれず、失望した。
やがて僕は飛行機の操縦士になった。大人になってからも、心から語れる人に出会えないままだったが、6年前、飛行機の故障で不時着したサハラ砂漠で、不思議な男の子(王子さま)に出会った。
王子さまは僕に「羊の絵を描いて」と頼んできて、友達になった。王子さまからこれまでの話を聞いた。
薔薇の花のこと
王子さまのふるさとは宇宙の小さな星で、星にいた頃は、バオバブの木が一面を覆ってしまわないよう引き抜く仕事をしたり、大好きな日の入りを眺めて過ごしていた。
王子さまは、星に咲いた一輪の美しいバラに心を寄せ大切にしていたが、バラの花は気位が高くて上手くいかず、王子さまは星を離れて旅に出た。
王子さまの旅
王子さまはいくつかの星を訪ね、命令好きな王様、うぬぼれ屋の男、のんべえの男、実業家の男、街灯の点灯夫、年寄りの地理学者と出会った。
彼ら大人は、名誉や数字など馬鹿馬鹿しいことに熱心で、王子さまは「もっと大切なことがあるのに」と思った。
地球への旅
王子さまは7番目に地球を訪れた。
降り立ったアフリカの砂漠では、黄色いヘビに出会い、砂漠を横断して高い山を登り、故郷の星のバラとそっくりな垣根の沢山のバラに会ってショックを受けた。また、転轍手や薬売りの商人とも話した。
キツネとは仲良くなって、絆を作ること(友達がいること)の幸せさや「大切なことは目に見えない」ということを教わった。
(親しくなると、相手が現れる時間が近づくと嬉しくなったりする。垣根のバラは故郷の星のバラと見た目は同じだけど、故郷のバラとは絆があり責任があること)
結末・ラスト
砂漠に不時着して8日、僕はのどがカラカラだった。広大な砂漠で井戸を探すのは馬鹿げていると思ったが、王子さまに促されて一緒に井戸を探し歩いた。
月明りに照らされた砂漠は神秘的で美しく、子供のころ過ごした古い館での宝探しを思い起こさせた。そして夜明けに井戸を発見した。
翌日、飛行機の修理が上手く行ったが、その日は王子さまが地球に来てちょうど1年の日だった。
王子さまの近くで黄色い光がキラっとひかり、王子さまは消えてなくなった。
あれから6年経つが、空の星を見上げると、王子さまのことを思い出して幸せな気持になる。
「星の王子さま」登場人物
僕
飛行機の操縦士。郵便飛行のパイロット。著者自身がモデルと言われている。
王子さま
小さな星(小惑星B612)から来た少年。金色の髪で金色のマフラーをしている。星から見える夕日を眺めるのが好き。
バラの花
美しくよい香りで王子さまを幸せにしてくれるが、プライドが高くてご機嫌ななめになりやすい。4つのトゲで身を守る。
作者の妻・コンスエロがモデルとされている。
星の住人
命令好きな王様
白貂(しろてん)の毛皮のコートを着て立派な玉座にかけている。他の人はみんな自分の家来だと思っていて、自分の権威を保つことが大事で命令するのが好き。(お人好しなので無理な命令はしない)
→とにかく地位や役職にこだわる人 (何をやるかの中身ではなく、地位があることが重要)
うぬぼれ屋の男
おかしな帽子を被ってい、他の人はみんな自分のファンだと思っている。自分を褒めることを求める。
→自分にしか関心がない人、ナルシスト、(褒めて)くれくれの人というイメージでしょうか。
のんべえの男
酒好きで沢山の酒瓶に囲まれている。本人いわく、飲んでいることの恥ずかしさを忘れるために飲んでいる。
→依存状態の人
実業家
忙しく数字の計算ばかりしていて、五億の星をただ所有していることに価値を見出している。
→多くの不動産や資産を持っていることが自慢の人、といった感じでしょうか
点灯夫
指示に従って街灯の火をつけたり消したりしている。王子様がこれまで訪れた星の中で一番小さな星で、回転が速いのでしょっちゅうつけ消ししないといけないが、点灯夫は自分の仕事に誇りを持っている。
自分以外のことのために物事を行っているので、王子様が唯一友達になれたるかもと思った人物。
年寄りの地理学者
自分は座っているだけで、探検家の報告をまとめる仕事をしている。自分の星に海や街、砂漠などがあるのか何があるのかも知らない。
→現在の実際の現場を見ないのに、自分は全てを知っていると思っている老人
地球の住人
黄色いヘビ
王子さまが地球ではじめて出会った動物。危険な毒ヘビだが、同時に不思議な力を持ち、王子さまが故郷の星に帰る手助けをする。
垣根のバラの花
王子さまが故郷の星で大切にしていたバラとまったく同じ見た目
キツネ
王子さまと仲良くなり、物事を心で見るということ、絆を創造する(creer de liens)ということを教えてくれた。→挿絵の耳のとがり具合や生息地からすると、フェネックギツネと思われます
転轍手
電車の線路の切り替えを行う人。
商人
のどの渇きをおさえる薬を売っている。
感想・考察
だいぶ昔に一度読んだ時は、いまいち意味が分からず、正直つまらないかも?と感じていたのですが、今回読み返してみて、解説本も読んでようやく意味を飲み込め、年を取ってからの方が刺さるものがある本だと思いました。
童話のイメージがありますが、メッセージを理解するのが難しいので、子供には難解かもしれないです。
なお考察する上で「星の王子さまの美しい物語」という図書を参考にしました。
僕=サン テグジュペリ
物語の語り手である”僕”は、作者・サン=テグジュペリ自身であると言われていて、本作品には飛行士である著者がリビア砂漠に不時着した時の経験や、バラとの関係は妻・コンスエロとの関係など、作者自身を取り巻くことが反映されています。
何が言いたいのか
冒頭に「この本を親友のレオン・ウェルトに捧げる」とメッセージがあるので、王子さまを親友と重ねているのかと思いましたが、よくよく読み込むと、「僕=王子さま」で、語り手の「僕」が子供時代の自分(王子さま)と思いがけなく出会うストーリーだと読み取れます。
子供のころ大事にしていたことを大切に
作品の中でしばしば「大人たちはどうでもいいことばかりに捉われる」ということが描かれています。
(例えば王子様の星について説明するとき、その情景ではなく、「B612番という惑星です」と数字で説明すると納得したり、旅した星で出会った人々が、権威や財産などを一番の価値だと思っていたり)
大人になると感性ではなく、数字や権威などにとらわれがちになるけれど、自分の中にある子供の時の心に耳をすまして欲しい、というメッセージを感じました。
絆を大切にする
バラとの関係は、絆を結んだ人は最後まで大切にすることを伝えたかったのだと思います。
作者について
作者のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリは、飛行士であると同時に著名な作家で、作家活動のため渡米しアメリカに長期滞在していました。
1943年に「星の王子さま」を発表後、戦線に復帰し、1944年飛行隊の任務の途中で消息不明となり帰らぬ人となりました。(母国フランスでは没後の1946年に刊行)
発行部数は全世界で8000万部以上
1900.6.29
1944.7.31フランスの小説家。飛行士。初めエコール・ナバル(海軍兵学校)を志望したが果たさず、兵役で空軍に入隊、飛行士の資格を取ったのち、ラテコエール社に入社、初期の長距離航空路開設に重要な役割を果たした。第二次世界大戦に際して偵察機パイロット、のち北アフリカで連合軍の飛行士となったが、任務でコルシカ島を飛び立ってのち、消息を断った。墜落地点は長らく不明だったが、2003年10月にマルセイユ沖で引き揚げられた機体の一部が、2004年に本人の搭乗機と確認された。飛行士としての知識と経験を、人間精神の価値に関する深い省察にまで高めて、密度の高い誌的な文体に表現した。『南方郵便機』Courrier Sud(1929)やフランスと南アメリカを結ぶ最初の定期航空路開設のエピソードを扱った『夜間飛行』、飛行の体験を通じての、人間の尊厳と責任、愛と連帯に関する思索を記した『人間の土地』、ある従軍飛行士の悲劇的任務の物語『戦う操縦士』や童話のスタイルによる『星の王子さま』のほか、レジスタンスのさなかに同胞に向けて書いた『ある人質への手紙』、遺構集『城砦』がある。