おしん

おしんのモデルは2人【丸山静江さんと関東の農家女性 】

2019年6月6日

おしんの主なモデルは実在の女性2人(丸山静江さんと関東の農家女性)で、橋田さんの著書・おしん世代の女性の体験談ルポ「母たちの遺産」に実体験が書かれていてます。

この記事では、おしんのモデルとなった方の実体験や、おしんの舞台(山形・佐賀・三重)のモデルがあるのか、その他の物語にまつわる裏話を、原作者・橋田寿賀子さんの本を元にまとめてあります。

 

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おしんのモデルは2人

「おしん」はその人気ゆえ、どのようにして物語が作られたのかが気になる方も多いと思います。

原作者・橋田寿賀子さんの著書によると、一人の人物をモデルにしたというわけではないものの、一般の方の体験談に着想を得ていることが分かりました。

ルポタージュ「母たちの遺産」という本で登場する、静岡の丸山静江さん千葉の農家の女性の2名の方です。

※ヤオハンスーパーの和田カツさんがモデルという説もありますが、こちらについては橋田さんの著書からははっきりしたことは分かりませんでした

 

おしんのモデル① 静岡県の丸山静江さん

静岡在住の丸山静江さん(故人)がおしんのモデルであることは公に知られていて、ご本人の体験の中でドラマの設定と重なる点は下記のとおりです。

 

子沢山の百姓の家に育ち、6才で奉公に出た。静岡ではあるが当時は雪が積もる地域で、冷たい川でおしめを洗いなおすよう命じられ、辛くて奉公先を逃げた

近くの親戚の家の兄さんがやさしく家に迎え入れてくれ春まで過ごした。家に帰った後は父に蔵に半日閉じ込められた。杉を背負って植えた

■その後も複数奉公に出て、川を筏に乗り向かったことも赤ちゃんをおぶりながら小学校に通えた

■叔母の紹介で上京し、髪結いとして見習い師事の後独立し、色町の女性の出髪をした。収入が良くなると実家の父と兄から金を無心され送金した

■客先の女店主の紹介で洋服商の男性と結婚。夫は武士の名家出身で世話をするじいやがいた。じいやはとても良い人だった。夫の仕入れたラシャ生地が裁けなくなり露店で売ったことも。その時仁義の切り方も覚えた。

親のいない9歳の女の子を紹介され、不憫なので50円で引き取り養子にした

■故郷に飯屋を開いて狙い通り繁盛し、その後も次々と商売を興した。養女は結婚後も、家族皆で家業を手伝ってくれている。

→全体的におしんの設定と共通する出来事が多いです。この方は顔出しして新聞記事にも掲載されていましたので、モデルの1人であることは確かです。

 

おしんのモデル② 関東の農家の女性

関東の農家女性も、部分的に物語のモデルとなっていて、以下がドラマの設定と重なる点です。

 

■結婚後しばらくして赤子の長男と共に、農家である夫の実家に同居することに。(夫の弟妹達も同居)他人である自分と長男は、食事の時は庭に出て待ち皆が終わったら食べる。(食べ物はあまり残ってない)おかわりと思っておひつに手を触れると、舅が咳払したり姑が嫌味を言う。

■井戸で水汲みをする時長男を背負っていると井戸に落ちそうで、夫が手伝うと、姑が「この鼻たらし(妻を甘やかしている)」と夫を罵倒し、以来夫は皆の前で自分をかばわなくなり罵倒するようになった

■姑はとても働き者で、農作業に慣れない自分達の働きについてこきおろし、姑の足音を聞くだけで恐怖を感じるようになり、気に入られるよう一生懸命働いた。

■姑は、自分たち夫妻には内緒で、実娘や孫たちに”ぜんざい”を振る舞った。

■第2子出産時は誰も見に来ず一人で産んだ。娘は産後すぐに他界した。

 

→おしんの佐賀編の設定とかなり一致していました。

体験談にはより壮絶な出来事も書かれていて、わずか少し前の時代にこんなことが‥と思うような内容でした。

橋田さんは、他のエッセイでは「おしんの姑の設定は、人から聞いた話や、自分の姑に言われたセリフも生かしている」と書いているのですが、恐らくこの方の置かれた状況を考慮して(当時この方の姑が健在だったため)、この方がモデルであることを全面に出さないように気遣ったのではないかと思います。

おしんの舞台のモデルはあるのか?

次に、おしんで登場する場所が、なぜその場所なのかについてまとめました。

山形県(おしんの故郷)

おしんの故郷が山形なのは、橋田さんにとって山形が印象深い地であるのと、「昔、奉公に出る子供が最上川を筏で下った」という話が心に残っていたからです。

橋田さんは、敗戦直後に山形に一か月位疎開していたことがあり、「東京がひどい状態の中、山形は実りの秋で美しい自然と食べ物が沢山あり、敗戦のショックから救われた気持ちになった」と著書に記しています。

その時地元の方から聞いた、子供が川を下って奉公に出る話がとても心に残り、会社員になってから、最上川の上流から酒田までバスや列車を使って旅行もしたそうです。

佐賀県(夫・竜三の実家)

おしんの夫・竜三の出身地は佐賀で、ドラマ内の姑の恐ろしさから、佐賀が風評被害を受けたとらしいのですが、著者としては、竜三を「葉隠精神」を持つ男にしたかったから、という理由で、竜三を佐賀出身にしています。(葉隠というのは、肥前の武士の心得を書いた江戸時代の書物です)

竜三は戦争の時、軍に魚を納めて余裕のある暮らしを送り、積極的に少年兵を説得し戦地へと送り出すこともしていて、戦後それを悔いて自決します。

橋田さん自身、終戦前の半年は海軍経理部で働いていた経験があり、終戦後、戦犯以外にも戦争に協力した人は(自分も含め)沢山いたのに、そのことに何の責任も感じていない人を沢山見たそうです。(物資を横流しし闇市で売って大金持ちになった将校もいた、といったことも耳に入ってきた)

そういったことから、「戦争に協力したことに対し責任を取る人間がいてもいいのでは」と描いたのが竜三で、戦争は国民ひとりひとりに責任があるのだということを描きたかったそうです。

→当時を知らない者からすると、竜三は家族を残して世を去ってしまう身勝手な夫のイメージがありましたが、原作者の思いによる設定なのだということが分かりました。

三重県(おしんが魚の行商を始める場所)

おしんの魚屋は伊勢が舞台ですが、これは、三重という場所が先にあったのではなく、(多分ですが)魚屋をさせたかったから選んだ場所なのではと思います。

なぜ魚屋なのかというと、橋田さんのお姑さんが網元で(おしんのドラマ内でのひさおばさん(演:赤木春恵さん)の仕事)、女手一つで子供達を育てていた方だったそうで、そういったことから橋田さんにとって漁業が身近だったのと、女性が自分の頑張りで自活する職業としておしんに合っていると思ったからではないかなと思います。

 

「おしん」の裏話

以下は、橋田さんの著書に書かれていた「おしん」にまつわる裏話です。

おしんで書きたかったこと

橋田さんは「日本人はもうこれ以上、経済的に豊かにならなくてもいいのでは、身の丈に合った幸せを考えてみては」ということを伝えたかった、著書に記しています。

しかし、その後バブル到来でメッセージは伝わなかったと感じ、その後不況になった後の方が、再放送を見た若い方から共感の手紙を沢山もらうようになり、ようやく救われた気持ちになったそうです。

おしんの生まれ年の設定の理由

昭和天皇の時代を書きたかったから天皇と同じ1901年生まれの設定にしたそうです。なお、おしんの次男は仁で、その妻は道子という名前です。先代の天皇夫妻を彷彿とさせますね‥。

企画が通るまで時間がかかった

おしんの物語の構想をTBSの昼ドラマに提示するも却下され、NHKでも"暗くて華がない"とボツになり、その後3年位たってようやく日の目を見たそうです。

 

橋田寿賀子さんの著書

以下は、本記事を作成するにあたり参考にした橋田寿賀子さんの著書4冊です。

母たちの遺産

昭和55年(1980年)に雑誌「月刊主婦と生活」で連載された、母世代の12人の女性の人生の体験談の書籍化本です

橋田さんが一般の方から貰った手紙がきっかけで(子供の頃米一俵で何度も奉公に出された後、女郎に売られ、そこから逃げてミシンを習い自立したという苦労の半生が書かれていた)、

内容に衝撃を受け「何としてでも明治生まれの女性の生涯を描いて伝えたい」と体験談を募集、連載化した、という経緯で出来た本です。

体験談は100通以上集まり、その中から12人の人生について連載し、各回とも ①本人の手紙 ②橋田さんとの対談 ③橋田さんの感想 の3パートで構成されています。

戦争で夫を亡くし女手一つで子供5人を育て上げた話、子供の頃から学校に行かず商売を手伝って来た方等の話も書かれています。

(この本は絶版なので私は国会図書館で読んできました。国会図書館では、本か "月刊主婦と生活"のデジタル閲覧で読むことが出来ます。雑誌の方は、昭和55年3月号が丸山さんの話、4月号が農家嫁の方の話です)

 

↓以下3冊はエッセイです。笑える箇所もあり、自分にとっては刺さるワードもあり、楽しんで読めます。(さすが脚本家の方の本なので、とても読みやすい文章でした)

 

旅といっしょに生きてきた

目次
1章 旅はドラマ - 脚本にも生きている旅の記憶 -
2章 自立への旅 - 十代と二十代 -
3章 1年の200日を貧乏旅行 - 日本を知る、人を知る -
4章 夫婦と旅と - 忙しくても、見たいものを、行きたいところへ
5章 七十代からの支度 - 人生を豊かにするために -
6章 船の旅が一番! - 好奇心の赴くままに -
7章 旅と人生 - 旅も人生も過程が目的だから -

これまでの旅の思い出が書かれている本です。独身時代はユースホステルを利用し全国を旅して楽しんていて、その経験が脚本家の仕事にも生かされているそうです。

恨みっこなしの老後

目次
1章 いくつになっても体が資本
2章 転機は自分でつくる
3章 大切なのは、心まで貧しくしないこと
4章 自分が変われば、それで済む
5章 「持っていないもの」に縛られない
6章 早く子離れすることが、一番の愛情
7章 他人にはガラクタでも、自分には宝物
8章 かなしい出来事にも、良いことはついてくる
9章 使わないお金はないのと同じ
10章 「誰も恨まない老後」のための12箇条
11章 人生「二流」がちょうどいい

最近(2018年2月)出版の本です。90代の橋田さんが、これまでのことや老後を送る上で思うことが書かれています

お年を召してからは飛鳥Ⅱの船旅を楽しみにしているそうです。旅に出るためと、寝たきりになってしまいできるだけ人に迷惑をかけないために、50代からはじめたスイミングを続け、食事・運動に気をつけているそうです。

 

おしんの遺言

目次
1章 真 真心をこめて毎日を生きていますか?
2章 芯 揺るぎない芯を持っていますか?
3章 信 譲れない信念がありますか?
4章 親 親子の関係をわきまえていますか?
5章 心 心に鬼を飼っていませんか?
6章 深 深謝する気持ちを忘れていませんか?
7章 慎 慎みという女の武器を知っていますか?
8章 神 あなただけに見える神様がいますか?
9章 身 健康な身体を保つ努力をしていますか?
10章 伸 伸び縮みの人生を楽しんでいますか?
11章 辛 辛抱という名の灯りをともしていますか?
12章 新 新たな自分探しをしていますか?

おしんの名前にちなんだ漢字12文字をテーマにしたメッセージが書かれています。

 

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